ほとんどの科学論文を、論文出版社のペイウォール(支払いのところ)を回避してダウンロードできるようにしてしまうサイト Sci-Hub (→ Wiki)について以前書きました。
このサイトは有料の科学論文をタダでダウンロードできるようにしていますが、開発者の信念は、公金などで得られた科学成果、人類全体の財産である科学成果が、出版社の私的利益の追求のための道具になりすぎている、ということへのアンチテーゼです。
著作権を侵害する行為であるとはいえ、違法であるとはいえ、科学者や科学界からは賛同する人も多く、応援する声もよくきかれてはいます。
議論は尽きません。この記事がとても分かりやすいです。
▶ Sci-Hubに関する尽きない議論:海賊サイトか、研究者の味方か?
さて、ここ数日、文化審議会の著作権分科会が、違法ダウンロードの罰則拡大の意見をまとめたとの報道がありました。
▶ 共同通信 違法ダウンロード、罰則拡大へ
▶ 朝日新聞 海賊版静止画のDL規制を
▶ 毎日新聞 文化庁、「海賊版」の静止画ダウンロード規制へ
報道によりますと、
インターネット上で違法に配信されたと知りながら、有償の漫画や雑誌、小説、写真などをダウンロードする行為に2年以下の懲役か200万円以下の罰金、またはその両方を科す方針を固めた
とのこと。音楽や動画に限定されていた違法ダウンロードの対象を広げる方針とのことです。この中には「論文」も含まれているようです。
近々、パブリックコメントの募集が行われる方針のようですね。
この法律改訂によりおそらく Sci-Hub は完全に違法となり、ダウンロードすることに罰則が適用されると思われます。
この Sci-Hub の使用状況については首都大学東京学術情報基盤センターの栗山さんの「学術論文違法共有サイトへの日本からのアクセス状況 」が非常によく検討されています。
これによりますと、2015年の半年間だけですが、政界で 2,800万 ダウンロードがあり、日本からも 23万少しであったようです。内訳としては、とくに東京からのダウンロードが多く、研究機関などからの利用もうかがわれますね。
出版社別では Elsevir がやはり一番で25%程度です。
このまとめはやや古いので、今ではもっと使っている人も多いのではないでしょうか。
著作権は重要な権利です。それは大前提で、出版業界の現在の在り方も少し変わるかもしれません。動向に注目したいと思います。