病理医研究者のぼちぼち日記

病理医で研究者の著者が病理のことを中心にのんびりつづるブログ

書籍紹介『リンパ組織(非腫瘍性疾患病理アトラス)』

 

 文光堂が、今、力を入れている非腫瘍性疾患病理アトラスシリーズの1冊を紹介します。リンパ組織です。

 

 

非腫瘍性疾患に関するリンパ組織分野の病理を扱った唯一の和書

 この企画シリーズはとてもよくて、腫瘍ではない病理のアトラスは貴重ですね。AFIP のアトラスシリーズなど、世界的には非腫瘍性のアトラスもよいものが沢山ありますが、和書では少ない印象です。

 リンパ節であれば Ioachim がありますが、もう少し広く、リンパ組織を扱っているというのも良い感じです。

 

 編集は、リンパ腫の病理分野において今の世代のスターである佐藤康晴先生(岡山大学教授、IgG4 や Castleman で輝かしい)と癌研の竹内賢吾部長(リンパ腫全般、ALK融合遺伝子、BpDCN などでも輝かしい)。

 

 内容、序文、主要目次は公式サイトの紹介ページで見ることができますが、「感染症や反応性病変に加えて、腫瘍との境界病変、さらには菊池・藤本病や自己免疫疾患関連、IgG4関連疾患など幅広く取り上げ」て企画されています。

 

 総論は検索法や一般論が読みやすくまとまっており、各論は基本的に疾患単位ごとに書かれています。大変読みやすい章が多く、どれもアトラスも綺麗です。近年はバーチャルスライド技術で画像をとっている著者が増えており、画質も良いですね。

 

 リンパ組織は病理診断には結構、供されます。リンパ節生検などは当然のことながら、癌疑いなどでの生検に混じってくることや、手術材に入っているリンパ組織の評価などもあります。病理組織だけで診断がつかないことも多々あり、臨床病理的な評価も必要ですね。

 

 Ioachim とともに病理診断には揃えておくと役に立つでしょう。