病理医研究者のぼちぼち日記

病理医で研究者の著者が病理のことを中心にのんびりつづるブログ

『The Cell』 の紹介とその読み方について

 

 

 分子細胞生物学を学ぶ人のための、王道の一冊をあえて紹介します。

  

The Cell

 
 将来生物学をやっていきたい人は大学の1~2年程度の初期にこの本を読み通しておくことを、どこまでも強く推奨いたします。とにかく基礎として一番の教科書であると考えています。いろいろ意見はあるかもしれませんが、私はこれを一押しにしたいと思っています。

 

Molecular Biology of the Cell

  

Molecular Biology of the Cell

Molecular Biology of the Cell

 

 

 とにかくこの教科書は生化学から分子生物学の基礎、細胞生物学、そしてそれに関連する分野への橋渡しとして、基礎的な部分をしっかりと記載してくれており、バイオ系の勉強をはじめた学生さんにとっては非常にわかりやすく精緻で一番良い本であると考えます。

 

 既に第6版ですが、どんどんと厚くなっていった後に、レファレンスや一部のデータは電子化されてさらに増えています。私自身は第2版から、現在の6版まですべて通読しています。読むたびにどんどん厚くなっていく上に、どんどん最新の情報が入れられて進化している本です。

 

 なぜ早く読んでほしいか、大学生に勧めたいか、というと、とにかく基礎系の医学やバイオ・生命科学の研究を将来考えておられる方には基礎的な知識、考え方、歴史、方法論、文献を知るのは早い方がよいと思うからであり、この一冊をよんでおくと基礎的な部面において本当に力になるとおもっているのです。ですから学生の早いうちに読むべきであると言いたいのです。

 

 これを読むならおすすめは最初から順番の通読、これが一番です。とにかく量は多いですが、非常によい順序で章立てされており、学生のうち、時間があるならぜひ通読をおすすめしたいと思います。

 

 もし、時間がなければもちろん興味のある所をつまみ食いしたり辞書のように使ってもいいとは思いますが、それは基礎ができている方へのおすすめの方法になりますね。

 

 しかししかし、正面突破はやはり…これを原文で読むには、…相当の覚悟がいります。とくに英語に慣れていないうちは時間がかかって頭に内容が入らないかもしれません。

 そこで、いくつか方法を考えてみたいと思います。

 

 もちろん取り組んでみたい!という人は正面突破もやってみることを後押ししたいとは思います。

 

 

訳本で読んでみる

 


 まず一つは、訳本で読むこと。これもいいと思います。英語の勉強は兼ねられませんが、まずは分子細胞生物学をしっかりと理解するという目的では問題はありません。訳本は以下です。

  

細胞の分子生物学 第6版

細胞の分子生物学 第6版

  • 作者: ALBERTS,JOHNSON,LEWIS,MORGAN,RAFF,ROBERTS,WALTER,中村桂子,松原謙一,青山聖子,斉藤英裕,滋賀陽子,田口マミ子,滝田郁子,中塚公子,羽田裕子,船田晶子,宮下悦子
  • 出版社/メーカー: ニュートンプレス
  • 発売日: 2017/09/15
  • メディア: 大型本
  • この商品を含むブログを見る
 

 

 訳はもちろん及第点レベルでしっかりしています。これももちろん結構な量がありますので、日本語とはいえ大変といえば大変ですよね。大学院入試前などに確認にさっと読み返すという使い方で訳本を一度使ったことがあります(銀色だったので第4版かな?)。

 

 

 訳本でもでっかいし高いし…ちょっとなぁ。すぐには無理そうだなぁという方もいるかもしれませんね。

 

 そこで、これでもハードルが高いという方にはさらに二つ方法があるように思います。一つは、これの要約本を読むこと。もう一つは副読本として他の入門書を読んでからこちらを読むことです。

 

 

要約本をよむ

 
 要約本はこれになります。アメリカでも教科書として使われているところも多いようですね。日本でも医学部の一部ではこの簡易版を教科書採用しているところがあるようです。

 

Essential細胞生物学(原書第4版)

Essential細胞生物学(原書第4版)

 

 

 

 どちらかというと個人的には、この要約本はパラメディカルの学生さんや、ややできのいい高校生向けかなぁとは思いますが(というのは読み込んでもエッセンスだけまでしか達しないため)、最初に読んで全体像をつかんでから、本物の方に進むのでもよいのかもしれません。

 臨床医になる人にはこのぐらいの基礎で十分というご意見もあるかもしれませんね…個人的には研究者はもちろん、医師になる方も本体を制覇していただきたいようには思ってしまいますが…。

  

副読本を読んでから読む

 
 さて、もう一つの方法、副読本を読んで知識をかためながら、または、全体をみてから本体にとりくむ、という方法。

 副読本をあげるとすれば、基礎として生化学、分子生物学がわかっていると特によいと思いますので、以下のような本を読んでから入るのはありだと思います。

  

好きになる生化学 (KS好きになるシリーズ)

好きになる生化学 (KS好きになるシリーズ)

 

 

 非常に簡単にわかりやすく書かれた第一歩としての本で、簡単すぎるという意見もあるかもしれませんが、いいと思っています。まずは慣れることが大事、というところから入るには絶好の本であると思います。

 

 基礎的なことはきっちり書いてあると思いますので、腑に落としながら、理解していけば基礎の勉強を始める準備ができると思います。

  

好きになる分子生物学 (KS好きになるシリーズ)

好きになる分子生物学 (KS好きになるシリーズ)

 

 

 上記生化学の本と同じシリーズの分子生物学のこの一冊もお勧めできます。非常にわかりやすく書かれているので抵抗感なくはいれると思います。知識量というめんではもちろんおおくは足りませんが、全体を俯瞰して、これからどういうことを細かく勉強するのか、ということが身につくと思いますので、導入にはいいように思うのです。

 

はじめの一歩の生化学・分子生物学 第3版

はじめの一歩の生化学・分子生物学 第3版

 

 

 この羊土社の本は非常にわかりやすい図版と、丁寧な解説がなされておりお勧めできます。生化学と分子生物学両者をしっかりあつかっているので、The Cell を読む前に読んでおくとかなり全体像をはあくすることができるように思いますし、生化学も分子生物学もまず一冊で、という用途ではかなりお勧めしたい一冊です。

  

 

 

 実は副読本の真打はこのシリーズ。分子生物学講義中継は 1~3の3冊と、0というのが2冊あるんですが、初めて勉強を始める人は0から読んでもいいかもしれません。

 

 おすすめするのは1~3。難しいことも非常にわかりやすくかみ砕いて説明しており、図も多くわかりやすい。とくにシグナル伝達などはこの本はとても熱心に情熱を傾けて書かれたんだなぁと感心しながら読んでしまいます。

 

 もちろん単著ですので偏りもありますが、非常に井出先生の人柄もわかるような丁寧な書き方で気楽に読み通せる内容であると思います。

 

というわけで

 とにかく方法はいろいろあると思いますが、ぜひ、バイオ・医学系の研究職を目指す方、本格的に生物学を知りたいと考えている方には、The Cell を読んみていただきたい!そういう思いでいます。

 

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